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切り込み隊長の本 (つづき)

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(つづき)


 だが、立ち返って考えれば、もとから私たちはそれほど新聞をきちんと読んでいた

だろうか?一面から政治面、経済面を読み進め、地域面に芸能欄にスポーツ欄、最

後は三面記事で事件や与太を読み最後に番組表を見る、という読者が果たしていまま

でも大多数であったか。私も学生の頃はおおいに新聞を読んだが、隅から隅まで読む

ことなどついぞしなかった。ましてや、新聞各紙を読み比べて論調の違いを知る、な

どという行為はしたことがない。



 誰もが検索閲覧できる情報は本当に価値をもつのか


 押し紙(販売店が売れるあてのない新聞の代金を、新聞社に払うこと)だリベートだ

と様々言われているが、読売新聞公称一千万部、朝日新聞八百万部などという発行部

数を考えてみればいい。読者があの紙面を毎日あれだけ読み続けているはずがない。

ネットがあろうがなかろうが、昔から新聞は人が読み切れないはどの記事を日々大量

に量産し、家庭に届けているのだ。それも、新聞は何紙もある。他に雑誌もあれば、

テレビだって毎日複数チャンネル18時間以上放送する。ラジオも短波もAMもFMも

毎朝毎晩放送している。

 情報革命など訪れる前から私たちのまわりは読みきれないほどの情報に溢れている。

新聞のみならず、図書館にいけば何年分何十年分の暇が全部潰れるほどの情報が本に

格納され、整然と並べられている。情報など、元から大量にあるのだ。目を通しきれ

ないほどに。情報革命の本質とは、情報そのものが増えたわけではない。情報へアク

セスする方法の効率が良くなっただけである。私たちが情報の洪水に押し流されてお

り、ネット発の洪水のような情報に対して、報じる速さで新聞など旧来型のメディア

が負けているのだ、という論調がいかに的外れであるかは言うまでもない。

 また、ネットには多くの情報が流通しているとされるが、テキスト化されていない

情報にはリーチできない。画像や映像は、その特徴によってタグで管理されており、

Googleがいかに賢く神の如き存在だと振る舞っていても、平たく言えばデータ

がテキスト化された巨大データベースに過ぎないのだ。いくらインターネットが便利

だからといって、例えば貴方が昭和20年元旦に当時の首相がどんな談話を残したと報

道されたか調べようと思っても、検索では教えてくれない。ネットによる情報革命と

は、ネットに情報が乗っかっていない限り、実は何の役にも立たない。

 GoogleやYahoo!が産業として急成長していて利益を出している、した

がってその仕組みに謙虚に学ぶべきだ、というのは分かる。ネットを便利に、かつ有

効に使えば、ほぼ日常に必要などのような情報も入手できるというのは事実だ。ただ、

本当に価値のある情報、ネットにテキスト化されて掲載されていない、Google

がその巨大データベースのインデックスに登録していない重要な情報は、結局のとこ

ろ属人的な情報パスを使わなければ入手することができないのは言うまでもない。い

や、むしろ情報の価値という観点から言うならば、文字・テキスト化されインターネ

ット上のアーカイブとして誰もが検索し閲覧できるような内容が、果たして本当に価

値を持つものなのかどうか、よく考えてみるべきだろう。

 これらのネット産業が、あたかも情報を無料で閲覧させ、多くの利用者をかき集め

ている背景は、ネットインフラの劇的なコスト低下と、無料で閲覧させる代替として

取得しているユーザーの行動原理に基づいた広告ビジネスによる収入の2点にぎっく

り分けられる。その意味では、スポンサーを集め、視聴者に無料でテレビを観させそ

の代わりスポンサーのCFを見させる日本の地上波テレビのビジネスモデルと根本は

変わらない。ただ、電波は有限でその使用は免許制なのに比べ、インターネットは双

方向であり免許要らずであるという差異があるに過ぎない。



 新聞は見捨てられても、新聞記事は価値を失っていない


 そのネット産業が無料で閲覧させている情報のかなりの割合は、当の新聞社か提供

しているテキスト化された新聞記事そのものである。Yahoo!をネットブラウザ

のトップページに設定している利用者の80%程度は、時事ニュースをポータルサィト

の提供する無料ニュースの閲覧で済ませていると言われているか、ここで流通してい

る社会、政治、経済、国際、芸能、スポーツなど、はばすべてのニュースは新聞社や

通信社を中心とする既存のマスコミが発信しているものに依存している。Yahoo!に

限らず、ポータルサイトやコミュニティサィトで閲覧される情報のほとんどが

新聞社などから新聞記事を買ってきてサイトに載せ広告付きで無料で読ませているわ

けだ。

 それらネットで記事を無料で読む読者は、アクセス履歴などの個人情報と引き換え

に膨大な情報を閲覧できる状態にある。彼らが新聞社の公式サイトを訪れて他の記事

を読むことがあったとしても、そこで新聞を購読しようなどと思うはずがない。

......... (Amazonでの立ち読みはここまで)

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